あたたかい日差しに包まれた2冊(撮影/佐藤創紀)

 だからもう、ずっと戸惑いと不安のなかで書き続けています。これでいいのだろうか、次も読んでもらえるのだろうかって。コツコツと読者を増やしてきたのではなく、初めにたくさんの人に読んでもらえたから、かえってどうしたらいいかわからなくて。

 本当に不思議なルートを歩んできたなって我ながら思うんですけど。でもやっぱり読者さんの反応がうれしくて、読者さんに育てていただいたなという気持ちがずっとあります。

せやま:そういう潮井さんだから、読書が苦手な人にも楽しく読んでもらえるような文章が書けるんだろうなと思います。

潮井:そうだったらうれしいですね。私は、自分がnoteで書くようになって初めて、こんなにも熱を持って書いている方がたくさんいることを知ったんです。

自分にしか書けないものが誰にもきっと一つはある

潮井:創作大賞(note主催の創作コンテスト)でデビューされたせやまさんは、どういう小説を書くかとか、どういう表現で書くかということを、ご自身で切り開いてこられたと思うんですが、作品をつくる上での心構えを教えてもらえますか。

せやま:私も本当に、自分は特別な人生を歩んできたわけではないし、平凡な人間だと思っていて。

 でも、潮井さんがおっしゃったように、どんな人でも、自分にしか書けないものがきっと一つはあって。それがなにかを突き詰めて、熱を持って取り組めば、きっと誰でもなにかしらいい作品が描けるんじゃないかなと思っています。

潮井:答えが見つからない時は、どうやって乗り越えていますか? というのは、エッセイを本にすることになった時に、「作品として完成させるための答えって私のなかにしかないから、誰にも頼れない」と思ったんです。

 今はまだ見つかっていないけど、絶対にあるはずの答えを探すという作業をした時に、こりゃ大変だと思ったんですね。

せやま:何度も書き直して、しっくりくるものを探します。どうしても書けない時は、無理して書かずに、散歩したり料理したりしながら、思いついたものをとにかくスマホに書き留めて、もう一回パソコンに向かって、これってこういうことだったのかなと整理したり。

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