せやま南天『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(朝日新聞出版)
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潮井:やっぱりそうなんですね。物語ってそういうふうにできているんですね。『クリキャベ』に出てくる人はみんないい人だから、せやまさんを切り分けて人格を与えていると思うと、膝を打つというか。

 津麦も、津麦のお母さんも、織野朔也も、みんなちょっとずつせやまさんで、一人ひとりを救ってあげたいと思いながら書いていたんだろうなと思ったので。ものすごく嫌な人は出てこなかったから。

せやま:いつか書きたいです、ものすごく嫌な人。今は難しいかもしれないですが、いずれ挑戦したい。

潮井:あ、本当ですか。せやまさんの書くものすごく嫌な人、読んでみたい。

──津麦のお母さんは、嫌な人というわけではないけれど、津麦に対しては抑圧的な存在として描かれていたかもしれないですね。

せやま:私たちの世代(30代)は、しっかり家事をする母親の背中を見て育った世代だと思います。なので、「自分もあれぐらいがんばらなきゃ」と思っている人が多いことは、以前から感じていました。

 もし届くのであれば、上の世代の人にも読んでもらって、下の世代がなにを感じているかを知ってもらい、下の世代は、上の世代がどんな人生を歩んできたかを思いやって、お互いの歩み寄りのきっかけにしていただけたら、とてもうれしいなと思います。

『クリキャベ』を書いている時は、年齢や性別に関係なく、「生活をがんばっている人」に届いてほしいと思っていました。織野朔也のポジションを女性でなく男性にしたこともそうなんですけど、津麦と似た境遇の人だけでなく、男性や、もう少し年上の方にも読んでいただけたらうれしいです。

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