「自衛隊向けはバイク用とはまったく勝手が違う世界。生産量も年に数百個程度と少ない。社内に専任チームを置くような余裕もないのが実情です」(国内営業部)
官給品ではないものの、自衛官に人気の品や定番の商品もある。身につけている隊員が多いといわれる一つが、頑丈な腕時計として知られるカシオ計算機(東京都渋谷区)の「G-SHOCK(ジーショック)」だ。
広報担当者によると「隊員それぞれの判断で購入してもらっているようですが、どのくらい使っていただいているのか、正確な数は把握していません」。
訓練や災害派遣といった現場での活動に不可欠な地図データも、「自衛隊だから」という特別扱いはない。地図大手ゼンリン(北九州市)の広報担当者は「自衛隊のほか、警察や消防向けであっても、一般向けであっても、お客様によってカスタマイズすることはありません。どう活用するかは購入者次第」と話している。
最後に模型メーカー最大手のタミヤ(静岡市)を紹介しよう。自衛隊に商品を納めてはいないが、自衛隊との関係は深い。
というのも、タミヤのプラモデル第1号商品は、1960年に発売した旧海軍の戦艦「大和」の800分の1モデル。つまり、同社のプラモデルの歴史は、自衛隊とのつながりから始まったとも言える。
「自衛隊関連はどれも人気で、現在は19点の製品をラインアップしています」(広報担当者)
実物を再現したプラモデルの中にも、スポーツカーやバイクから、船、飛行機、恐竜までいろいろなジャンルがある。さらに兵器関連の商品は、第1次大戦時から現在まで国内外のさまざまな軍のものがある。
このうち自衛隊関連は商品数こそ限られるものの、陸自の主力「10式戦車」や最新鋭の装輪装甲車「16式機動戦闘車」、主力戦闘機「F-35A」、海自の輸送艦「しもきた」といった陸海空の装備がモデルの商品がそろっている。
「商品化にあたっては正式な手続きを踏んで自衛隊に協力を依頼します。模型の設計では実物の特徴や細かな部分までリアルに再現すると同時に、組み立てやすさにも配慮する必要があります」(同)
商品を紹介したり、ファンがつくった模型を披露したりするイベントも全国各地で開かれている。毎年5月に開かれる「静岡ホビーショー」(今年は5月13~14日)では自衛隊の広報コーナーがもうけられ、車両展示や隊員による説明が予定される。プラモデルを通じ、自衛隊と一般の市民とを結ぶ役割も果たしている。(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2023年4月14日号