ロンドン市内の土産物店に並ぶロイヤルファミリーの顔写真入りのマグカップ。英王室は身近で常にそばにある存在だ(写真:多賀幹子)

 それが国民の怒りを買った。女王はあまりにダイアナさんに冷たいではないか。「王室など倒してしまえ」という声さえ上がる中、女王はブレア首相(当時)らのアドバイスを受け急いでロンドンに帰り、テレビ演説をした。ダイアナさんを称賛し、葬儀も王室主催の準国葬にまで引き上げた。

 危機を切り抜けた女王は、その後、多くの国民に愛されたダイアナさんに学ぼうとする。誰とでも親しく話し、エイズ患者と素手で握手し、地雷廃絶活動を行い、ホームレスを助けたダイアナさん。国民との距離の近さこそ大切だと気づいたのだ。07年には世界に先駆け、YouTubeを開始し、13年に始めたインスタでは自然体のロイヤルファミリーの写真を公開。国民に開かれた存在になることに成功した。

皇居で保護猫と暮らす

 一方の日本の皇室。公式インスタグラムの始動は今年4月1日と遅く、皇室メンバーの関連グッズが土産物店に並ぶことはない。けれど、国民の多くに親しまれる存在であることは、英王室と同じだ。

 大規模な災害が起きれば、避難所を訪ねて地元の人たちと膝をついて語り合い、子どもたちに会えば、目線を合わせて声をかける。天皇、皇后両陛下が皇居でともに暮らす愛は、動物愛護団体から譲り受けた保護猫だ。ここ数年、注目が高まっているのは、愛子さま佳子さまだ。お二人が国民と向き合う姿勢は、天皇、皇后両陛下や上皇ご夫妻と似ているところがあり、とても好感度が高い。

 それぞれのスタイルで国民と向き合う英王室と日本の皇室。今回の天皇、皇后両陛下の訪英は互いに学ぶ良い機会となったかもしれない。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2024年7月22日号