


本人にとってはまぎれもない事実なのだから、子どもに「違う」と否定されれば腹も立つし、子どもに対して不信感も生まれます。関係性はどんどん悪くなる。
いいことなんて何もありません。
私にとって正しくない話であっても、父や母の話す言葉をそのまま受け止めてもいいのではないか……。そう思えるようになりました。
それに、「認知症の人が妄想めいた話をするのには、必ず理由がある」と杉山先生がおっしゃっていたのも印象的でした。話の背景には、その人のこだわりや不安があるんですよね。
――たとえばどんなことですか?
トメ 父が施設に入るときに、私に「おこづかいをくれないか」と言ったんです。何万円か持っておきたいのだ、と。施設では自分のお金は少額しか持っちゃいけないので、どうしてだろうと思ったんですが、よく聞くと「飲みに行くだろうからさ」って。
その顔が「会社員」だったんです。それで理解しました。
父は会社の転勤と同じように、新しく入居したら施設の入居者さんと飲みに行くと思ったんですね。もしかしたら自分で御馳走しなくちゃな、と思ったのかもしれません。
でもね、お父さん、きっと誰も誘ってくれないんだよ。そこは施設だから……。胸が痛みましたね。
同じことを何度も答える
――親御さんとの会話で気をつけていることはありますか?
トメ とにかく同じことを何回も何回も何回も質問されるので、本当にイラっとするんです。
たとえば私が山口にいるとき、母から1日に何回も電話がくるんですよ。質問はいつも「トメちゃん、いつ帰ってくるの?」なんですね。
さっきも言ったし、昨日もおとといも言ったよ~!って思うんですが、できるだけフラットに「あさってだよ」、翌日には「あしただよ」、その翌日には「今日だよ」って言うようにしています。カウントダウンだ~!って自分でおもしろがっています(笑)。
――仕事中の電話だと、イライラしそうですね。
トメ 杉山先生がおっしゃるには、「聞いたことは忘れても、教えてもらえた安心感は残る」のだそうです。逆にイライラして「さっきも言った!」と電話を切られると、不安感がますます膨らむ。そのせいで質問が増えたり、問題行動につながったりするのだそうです。
実際、その通りだったんです。「何回でも聞いてね」って言うと、質問が減る。知っておいてよかったなぁって思いました。