『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(上大岡トメ/主婦の友社)から
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 イラストレーターでエッセイストの上大岡トメさんの両親は、2021年に相次いで認知症を発症しました。22年10月に両親が施設に入居するまで、トメさんは山口県から横浜まで遠距離での在宅介護。認知症になった親を受け止めきれず、イライラする日々が続いたそうです。親の認知症と向き合うために、心構えはあるのでしょうか?

【漫画をじっくり読む】目からウロコ ! 認知症の親にとっての「事実」って?

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「接し方次第で改善する」と信じていた

――先にお父さまが認知症になり、半年ほど後にお母さまも認知症と診断されました。娘としては、かなりショックだったのでは?

トメ ショックでした。父は高度経済成長期にバリバリ働いていた技術者で、定年後もボランティアをする意欲的な人。母は料理上手で、いつも私を心配してくれていました。

 最初のころは特に、「まだ大丈夫!」「この程度は年齢相応だよ」と自分に言い聞かせていました。フィルターをかけて見ていたんですよね。それに「認知症」という言葉はあまりにも重くて、受け入れられなかったんです。

 認知症と診断されてからも、私は同じ話を何度もする父や母にずっとイライラしていました。

 つじつまの合わない話をされると「それは違うよ」と修正したり、同じことを言われると、「さっきも言ったよね」と思い出させようとしたり……。

 そのたびにイライラして、腹が立って、親に絶望して、イヤな娘になっている自分にも失望する。その繰り返しでした。

――認知症だとわかっていても、なかなか認められないんですね。

トメ 最初のころ、私は親を「説得できる」と勘違いしていたんです。「言い聞かせれば、理解してもらえる」って。事実じゃない話をしたら、ちゃんと訂正してあげるのが優しさだ、と。

 今思えば、本当に傲慢なんですけど、私の接し方で認知症が治るんじゃないかって思っていたんです。

 でもそのたびに親とケンカになって、お互いにイライラしてしまう。いいことなど何もありませんでした。

 私が変われたのは、『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(※トメさんの自著)の取材を始めてからでした。

認知症の人にとっての「事実」

 取材でお会いした監修の杉山孝博先生(川崎幸クリニック院長)のお話は、目からウロコでした。杉山先生は、「認知症の人の話は、けっして『まちがい』でも『妄想』でもなく『真実』なんです。その人の世界では、まぎれもない『事実』です」とおっしゃるんです。

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妄想めいた話でも必ず理由がある