2022年7月8日午前11時29分、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で演説する安倍晋三元首相。この直後に山上徹也被告に背後から銃撃された
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 衝撃的な事件から2年。政府は旧統一教会の解散命令を請求したが、政治家と教団の関係、宗教2世、高額献金をした被害者の救済など課題は山積している。AERA 2024年7月15日号より。

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 6月30日、東京都港区にある増上寺で安倍晋三元首相の三回忌法要が営まれた。法要に参列した岸田文雄首相は、自身のXに、こう投稿した。

「未だにあの日に起こったことが信じられません。(中略)私たちは安倍さんから引き継いだ『志のバトン』をしっかりと次の世代に引き継いで参ります」

 SNS上では「志ってなに?」「悪政のバトンなんか引き継がなくて結構」という書き込みも目立ったが、2年が経ってもなお、多くの人の中に事件の記憶は生々しく残っているようだった。

 衝撃的な事件の一報が知らされた時、社会には大きな動揺が広がった。中でも注目を集めたのが、事件の背景に旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の存在が浮上したことだった。

 殺人や銃刀法違反などの罪で起訴された山上徹也被告(43)は、逮捕後の調べに対し、母親が旧統一教会に多額の献金をしていたことを明かし、教団に恨みを募らせた末に事件を起こしたなどと供述。旧統一教会の友好団体・天宙平和連合(UPF)主催の行事に安倍元首相がメッセージを送っていたことなどから、つながりがあると考え襲撃したとみられた。

教団と自民党が癒着

 こうした背景が報じられるなかで、信者の親を持つ「宗教2世」たちが次々に苦しみを明かしはじめた。

 高額献金によって家庭が困窮し、まともに食事ができなかったこと。恋愛を制限されたこと。意図せぬ相手と結婚をさせられたこと──。旧統一教会によって、人生を壊されたと訴える声が相次いだ。

 旧統一教会と政治家との関係性にも注目が高まっていった。元信者らが、選挙支援や会合への出席を頼まれたと証言。教団側は火消しに回ったようで、親が生前、旧統一教会に入会していたという女性は、事件直後に教団関係者から「政治家と写った写真を回収したい」との連絡を受けたと証言する。

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