「会見の内容も開き直りに近いものが多かった。この2年間の動きを見ても、自分たちを擁護してくれる人を探すのに注力しているように見えました。脱会した信者や声を上げた人を関係者が中傷・攻撃したりする場面も目立ちました。これまでの問題に真面目に向き合おうとしているかは疑問で、無反省な印象です」(塚田教授)
昨年10月、政府は旧統一教会への解散命令を請求。だが、政治家との関係性は不透明なままだ。塚田教授は言う。
「政治的対応を振り返ると、22年12月には寄付の不当な勧誘を防止する不当寄付勧誘防止法が成立しました。ただ、すでにいる被害者を早急に救済するものではありませんでした。損害賠償請求訴訟の支援などを柱とする特例法も成立しましたが、これも枠組みとしては弱かった。いくつかの措置は取られたものの、いずれも実効性には乏しいものでした」
元信者や2世の救済を
政府の煮えきらない対応の裏側で、元信者や「2世」たちは旧統一教会への集団交渉を進めている。6月、全国統一教会被害対策弁護団は都内で会見を開き、献金を返金するように求める「集団交渉」に新たに20人の当事者らが加わったことを明らかにした。民事調停に移行した人も含め、計179人の被害者の請求総額は53億円にのぼるという。
「社会的に旧統一教会が問題のある団体であると認知されたからこそ、前進した面もあります。『宗教2世』問題への対応も含め、もっと早くにという反省は持ちつつ、前に進めていくしかありません」(塚田教授)
3日には、奈良地裁で山上被告の4回目の公判前整理手続きが開かれ、山上被告も出席した。初公判は来年以降とみられている。移り変わりの早い社会だが、決して風化させてはならない。
「政治との関係という点では、この2年間、首長選挙や統一地方選はありましたが、国政選挙は補選以外ありませんでした。関係の総括は、次の国政選挙で、投票行動や政策協定、政治活動の支援などを通じて問われるでしょう。それまで社会的な関心を持ち続け、改めて検証することが重要です」(塚田教授)
首相経験者が殺害されるという事件が突きつけた現実から目をそらさず、次の世代に向けて検証を続けることが重要だ。(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年7月15日号