ファンによるヒーローインタビューを受ける水谷(北海道日本ハムファイターズ提供)
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 現役ドラフトで移籍した選手の中で、覚醒した選手の筆頭格が日本ハム・水谷瞬だ。

【写真】2軍で4年連続本塁打王の「帝王」はこの選手

 ソフトバンクではプロ5年間で1軍出場を果たせなかったが、昨年オフに移籍し、新天地で才能が開花した。5月下旬に1軍昇格すると、広角に快音を連発。交流戦では史上最高打率.438で首位打者に輝いた。規定打席に達していないが、41試合出場で打率.333、3本塁打、24打点。チャンスメークするだけでなく、得点圏打率.432と勝負強さが光る。(記録は7月7日現在)

 他球団の打撃コーチは驚きを隠さない。

「ソフトバンクのファームにいた時から見てきましたが、ツボにはまった時の長打力は凄かった。でも確実性がまだまだでした。それが日本ハムで見たらコンタクト能力が格段に上がっている。内角の速い球に差し込まれながらも逆方向にはじき返す安打は技術がないと打てません。1軍でプレーしているからこそ成長速度が速いように感じます。水谷が活躍している姿を見ると、育成の観点で勉強させられることが多いですね」

 身長193センチ、99キロの恵まれたスイングから鋭い打球を飛ばす。俊足にも定評があり、石見智翠館高からドラフト5位でソフトバンクに入団した際は「将来トリプルスリーを狙える逸材」と評された。だが、1軍の壁は厚かった。昨年はウエスタン・リーグで83試合出場し、打率.259、4本塁打、35打点。打撃不振で3軍に降格した時期もあった。

「昨年2軍監督だった小久保監督が素質を認め、熱心に指導していましたが、あのままソフトバンクにいても外野は柳田悠岐、近藤健介、周東佑京、柳町達、巨人からトレード移籍したウォーカーがいて、1軍に入るのは厳しい状況でした。現役ドラフトで日本ハムに移籍したことは大正解と言えるでしょう」(ソフトバンクの関係者)

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元コーチが語る長距離砲育成の難しさとは