元厚労省、現ベネッセ・女性キャリア支援事業部長:白井あれいさん

白井 ベネッセで6月からの新規事業で女性の支援サービス「withbatons」を開始しました。若手の会社員が他の会社の女性リーダー6人と一対一で対話ができるというものです。実はキャリア研修のいちばん最初に話すのが、「完璧なロールモデルはいません」ということです。特に若い世代はロールモデルというと100点満点の誰かにすがりがちです。でも、それはやめた方がいい。それってつまり自分の軸が見つからないってことだと思うからです。事業でも「大事なのは6人の中の人からロールモデルを探すのではなくて、それぞれに会った時に自分がいいなと思ったところを切り取ること、と伝えています。その切り取るということは自分自身の価値観・キャリア観なんですよね。これは、パーツモデルを集めるともちょっと違っていて、そこのパーツを切り取った自分のキャリア観をちゃんと育てていかなきゃいけないんです。「ロールモデルを探す」の話にしちゃうと、青い鳥症候群で終わっちゃうから。

河村  そこに刺激をうけて、自分はこうなりたいって自分を作っていくということですよね。

「活躍」支援との両輪で

白井:両立支援は充実してきましたが、活躍支援とごっちゃにしすぎていると感じています。管理職の意向を調査すると、男女とも管理職になりたがらない。でも男女では内容が違っていて、女性は「なりたくないし、なれる気がしない」。男性は「なりたくないけど、やれと言われたら俺はできる」と。男性の場合は、身近に「あのやり方なら俺もできる」という男性管理職がいるわけです。一方で、女性管理職はまだ限られていて「あそこまでやらないといけないのか、それは無理」となるんです。多いのは両立支援ばかりをやって「これだけ整えているのに管理職をやりたくないっていうのは、女性側の意欲がないから」とされてしまう。両立支援と活躍支援は両輪でやらないと。

小泉:いま慶應義塾大学SFCで「ジェンダーと社会経済」という授業をもっています。性別関係なく、働くことに不安があるからこの授業をとったという学生が多くて、働き方改革が進んだとて「結局マッチョさが求められるんじゃないの」というネガティブなイメージをもっているようです。どうやったら学生たちに自分らしく働けそうと思ってもらえるかを考えることが、どうやって女性管理職を増やすか、に通じるなと思います。白井さんが活躍支援の必要性を挙げていましたが、「自分らしい心地よい働き方を見つける支援」と、河村さんがおっしゃっていた「事情を周囲に伝えやすい環境づくり」に、管理職がコミットすることが肝になると思います。

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2024年7月8日号

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三島恵美子

三島恵美子

ニュース週刊誌「AERA」編集部で編集や記事執筆、書評欄などを担当。書籍の編集も多数経験。

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