自民のシナリオ通り
政治資金規正法の改正案の審議でも、これと全く同じことが起きた。
岸田文雄首相から見ると、とにかく早く規正法審議を終わらせたい。特に、4月の衆議院3補選全敗や主要な地方選でも負けが続き、政権は死に体という声も聞かれる中で、なんとか、その雰囲気を変える必要に迫られた。その最大のチャンスが、東京都知事選で小池百合子知事を支援して勝利し、連敗からの脱出劇を演出することだ。
そのためには、6月20日の都知事選告示までに規正法改正案の審議を終えることが極めて重要だった。万一審議が遅れて、会期(6月23日会期末)延長に追い込まれれば、都知事選期間中に国会での裏金問題批判が続き、自民党支援を受けた小池知事が敗れたり、あるいは、それを恐れる小池知事側が、自民の支持をあからさまに拒否したりするという事態になりかねない。「連敗脱出」というシナリオが根底から崩れ去るわけだ。
したがって、6月19日までの規正法改正法の成立が至上命令となった。そこから逆算し、衆議院では、参考人質疑が5月27日に設定された。参考人質疑を終え、首相出席の委員会審議を行えば、強行採決への道が開ける。それにより、参議院での必要な審議日数を確保できるという計算だ。立憲の安住国対委員長は強く反対せずに参考人質疑の日程設定に応じている。
もちろん、その後も、厳しく自民案を批判する「国対歌舞伎」を演じながら。
この時、立憲内部からは、どうして世論の支持があるのに、簡単に採決を許すような国会運営をするのかという疑問の声が上がった。特に、完璧な改正案と言われる立憲案をまとめる上で大きな役割を果たした若手議員たちから見れば、ほぼ「完敗」と言って良い屈辱的内容のまま採決を許したことへの失望、いや、絶望と言って良い声が上がっていた。あと数日から1週間でも採決を遅らせるのは簡単だったはずだが、立憲国対は、声高に法案への反対は叫びながら、採決を簡単に許した。完全な八百長である。