予算案成立に「加担」した立憲

 また、予算案が通るまでは、予算関連法案以外は審議に入らない慣行があるため、予算審議の遅れは、残りの会期内での重要法案の可決、成立を阻害する可能性があり、これも政権の責任問題となる。

 また、予算審議では、テレビ中継が入ったり、首相の出席回数が他の委員会審議よりも多かったりするので、これが長引くと野党による政権攻撃に注目が集まり、政権の支持率低下につながるのが普通だ。

 こうした理由から、予算案をとにかく早く成立させることが重要だ。さらに、予算については、憲法が衆議院の優越を認めていて、参議院が衆議院で可決した予算を受け取った後30日以内に議決しないと、そのまま国会の議決となる。つまり、3月初めまでに衆議院を通過すれば事実上年度内成立が保証される。

 だからこそ、衆議院の予算の採決の日程をいつにするかが、与野党攻防のポイントになるのだ。

 さらに細かく見ていくと、最も重要な日程は、衆議院での中央公聴会をいつにするかである。

 公聴会を開催しないで予算案の採決をすることはできない。逆に、公聴会を終わらせてしまえば、仮に野党が採決に反対しても、強行採決ができる。したがって、公聴会の日程を2月末までに設定すれば、事実上衆議院での3月初めの採決が保証され、予算の年度内成立が保証される。

 実は、立憲の国対は、公聴会を2月29日に開催することに全く抵抗しなかった。つまり、予算の年度内成立のために立憲の安住淳国対委員長(元財務相)が自民党側に協力したことがわかる。

 もちろん、そんなことが広く知れ渡れば、安住氏の地位が危うくなる。そこで、公聴会の日程を決めておきながら、予算案の採決はまだ決まっていないかのような芝居、「国対歌舞伎」を演じるわけだ。非常に厳しい言葉で政権批判を展開し、戦う姿勢を見せるのだが、それは自民党の国対も了承済みで阿吽の呼吸で見せ場を作る。それによって政権支持率の低下があっても、予算が年度内に成立することのメリットの方が大きいということなのである。かくして、予算案は3月2日に衆議院で可決され、年度内成立が決まってしまった。

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立憲が演じた「国対歌舞伎」