英国留学中、大学周辺で自転車に乗る天皇陛下
上の写真が撮影された場所の現在の様子。当時とほとんど変わらない姿を残している(写真は楠さん提供)

「寮は築数百年の建物なので、みんな『暖房が入らない』とかしょっちゅう文句を言ってますよ(笑)。陛下がお好きだったという芽キャベツは、少し苦みと辛みがあって、クリスマス料理の付け合わせのイメージですね」と、楠さん。イギリス人は野菜をとろっとやわらかくして食べるのが好きで、日本人には相変わらず「ゆで過ぎな感じはある」そうだ。

テニスの代表選手に選ばれた陛下

 陛下は『テムズとともに』の中で、余暇としてスポーツに打ち込んだ経験もつづっている。

【ボートの練習は、男女混合のクルーの一員としてコレッジの艇庫からボートを出すことから始まった。私の後ろの女子学生が船を持つ位置や運び方をていねいに教えてくれた。それにしても女性も実にたくましい。きゃしゃな体格でも力は相当ありそうだ】

【テニスの後に、冷えているとはいいがたいビールで喉を潤すのも、これまた気持ちのよいものである】

 ボート、ジョギング、登山、スキーなどさまざまなスポーツに挑戦する中、とりわけ熱中されていたのがテニスだ。マートン・カレッジの代表選手に選ばれてカレッジ同士の対抗戦に臨んだこと、体格的なハンディを感じつつも必死で球を打ち返すうちに逆転したこと、試合後は主将がいつも“Well done, Hiro.”と声をかけてくれたことなど、事細かに記されている。

 楠さんによると、今もオックスフォードの学生たちは大半がスポーツのサークルに入り、上手に息抜きをしているという。また、大学を出ると大きな公園が広がっていて、郊外には数百年前の姿のままとも言われる美しい田園地帯「コッツウォルズ」が広がる。 

 そんな豊かな生活が保障された環境で、陛下は心置きなく研究に没頭された。

【(オックスフォード暮らしにおいて)最も大きなウエートを占めていたのはもちろん研究生活である。~中略~研究という一つの柱を通して私は数々の貴重な経験ができ、様々な人と出会え、研究者であればこそ味わえる感動を覚えたことも確かである】

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