英国留学へと出発する雅子さま

 オックスフォードの学生たちは、生活がほぼキャンパス内で完結するほど、研究漬けの日々を送る。学問を志す仲間たちと、寮や食堂や図書館で四六時中顔を合わせることで、カレッジ内の人間関係は濃密なものになるという。

 楠さんは、両陛下の留学先として見た時のオックスフォードの利点について、同じ英国の名門大学であるケンブリッジ大と比べても、政治関係者との人脈を築きやすいことを挙げる。卒業生には、マーガレット・サッチャー氏やデーヴィッド・キャメロン氏など英国歴代首相のほか、ミャンマーの民主化指導者アウン・サン・スーチー氏、オーストラリア元首相のマルコム・ターンブル氏など、各国の政界の重鎮が名を連ねる。

雅子さまが外交官時代に留学されたように、今もさまざまな国の中央省庁から留学生が派遣されています。世界中から優秀な人を集める強力な力を持ち、学びを深めることに特化した、歴史と伝統のある大学です」(楠さん)

「このまま時間が止まってくれたら」

 著名人や王族など世界のVIPたちを輩出するオックスフォードだが、両陛下とは特に強い結びつきを感じさせるエピソードがある。楠さんによると、2001年の愛子さま誕生の際、大学職員のメーリングリストに“Congratulations!”と祝意を伝えるメールが流れたのだ。メーリングリストは学内の連絡事項を共有するためのもので、卒業生に関するニュースが流れたことは後にも先にもなく、印象的だったという。

 研究、余暇、そして仲間との親交。2年間にわたる充実のキャンパスライフは、85年10月、幕を閉じる。帰国間際の心境について、陛下はこう振り返る。

【再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まってくれたらなどと考えてしまう】

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最初で最後のかけがえのない日々