4月に東京・渋谷で6日間にわたって開催された「Deathフェス」。主宰したのは2人の起業家、市川望美さんと小野梨奈さん。なぜ今、渋谷で「死」なのか。AERA 2024年7月1日号の記事を紹介する。
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──お二人の経歴を教えてください。
市川:情報通信に興味があって短大を卒業後、「電通国際情報サービス」(現電通総研)に就職しました。私は子どもの頃から、人に与えられた価値観の枠に押し込められて生きるのが苦手でしたが、この会社では分け隔てなく挑戦できる環境で育ててもらい、仕事が好きになりました。ただ当時は、心身をすり減らして働く人が多く、「もっと違う選択肢があるはず」という違和感もありました。出産を機に退職後、子育て支援NPOを手伝うようになり、子育て中も柔軟に働ける環境づくりに取り組む「Polaris」という会社を2012年に設立しました。このような、「自分たちで選択肢を広げる体験」が、デスフェスの活動にもつながっています。生きている時はもちろん、死んだ後も「慣例だから」という理由だけで、「火葬」や「夫の実家の墓に入る」ことを規定されるのではなく、そこにも「個人の選択」が入る余地をつくり、社会に受け入れられるよう環境を整えていければ、と思っています。
小野:私は小学校の時から星を見るのが大好きで、天文学を学べる大学を選びました。進学した東北大学理学部で当時まだ発見されて間もなかった雷雲上で起こる発光現象「スプライト」の存在を知り、宇宙地球物理学を専攻しました。私も枠にはめられたくない思いはずっとあって、独立後、3児の育児をしながら仕事を続け、女性経営者やフリーランスの支援にも取り組んできました。生き方も働き方も自分なりに選択してきたのに、死んだ後は他人が決めたレールの上に乗せられるのは納得がいかない。夫の実家のお墓に入るのも、そもそも狭いお墓の中に閉じ込められるのもちょっと嫌だな、と思っていました。専攻が地球物理なので宇宙に散骨してもらう「宇宙葬」がいいかな、と考えた時もありましたが、遺体を火葬せずに堆肥にして土に還す「堆肥(たいひ)葬」(有機還元葬)が米国で合法化されたのを知ってからは、より自然な形で地球に還ることが選べるんだったら、そっちの方が絶対いい、と思いました。