再結成コンサートであいさつするザ・タイガースの(左から)岸部一徳さん、瞳みのるさん、岸部四郎さん、沢田研二さん、加橋かつみさん、森本太郎さん=2013年12月27日、東京ドーム

「2023年に亡くなった詩人で小説家の富岡多恵子さんは、『舞台の上で観客にステキだと思わせる〈男〉というのはきわめて女的であり、ステキだと思わせる〈女〉はきわめて男的でステキな〈男〉と〈女〉はほとんど接近している』『そこで行われていることが、舞台から一メートル下の現実にあったとしたら、それらは糾弾され排撃されるにちがいない』というような言葉を残しておられます。富岡さんは1970年代からジュリーのファンだったんですよ」(島﨑さん)

 ザ・タイガース時代にはほとんどが女性で占められていたファン層は、ソロになってカラーテレビ全盛期にあらゆる層に広がっていった。だが、それでも当時は男性がジュリーファンだと公言するのは、はばかられる雰囲気があったという。

「背景にはやっぱり男性優位社会のなかで、GS文化に象徴されるような『あれは女子供のもの』という蔑視的なイメージがずっと付きまとっていたことも少なくないでしょう」

 と島﨑さんは語る。

「ジュリーが好きだった」と吐露する男性も

 そのムードが大きく変わったのが2008年、京セラドーム大阪と東京ドームで開催された還暦記念コンサート「人間60年 ジュリー祭り」のころからだ。

 2000年代に入り、テレビ出演を控えるようになっていたにもかかわらず、全80曲をフルバージョンで歌い上げた様子はメディアでも大きく取り上げられ、「ずっとジュリーが好きだった」と吐露する男性も目立つようになる。

 ねじめ正一が、

「ゲストもMCも一切なし。スポンサーもなし、メジャー資本もなし。ジュリー祭りはジュリーとお客のためだけのものだ」(「婦人公論」2009年2月7日号)

 とその感激を記したことに象徴されるように、自分を貫き通し歌い続ける「沢田研二」の姿そのものに共感するファンも増えていった。桑田佳祐や稲葉浩志、吉井和哉、河村隆一、宮本浩次ら多くのミュージシャンが歌ってきたカバー曲の系譜は、最近では藤井風にも引き継がれている。

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