前出の山口さんは、
「ジュリーは日本の大衆文化を語る上で重要なアイコン。でも、沢田さんご本人はいま、音楽以外の表現で自分を語ろうとしない。だから、彼を見てきた人、その音楽を聴いてきた人が時代の中での意義付けや価値を検証し、論評・記録することがとても重要だと思います」
とも指摘する。
失笑買っても、嫌み言われても
島﨑さんもこう見る。
「若いころは、一番でありたいという健全で飾り気のない欲望が大衆に奉仕させたと思う。賢く見せようとか一切思わない人柄」
多くを語らぬ60年近い年月の中でパフォーマンスの形は変容しつつも、一貫して浮かび上がるのは「やり抜く」姿勢だ。どの時代にあっても既成概念を壊しながらステージに立ち続ける。失笑を買っても、嫌味を言われても、非難やアンチのまなざしの中でも歩みを止めない。
「先駆的というのは対抗文化だということ。時代が移り変わっても沢田研二は変わらない。団塊の同世代は『我らがジュリー』と言わざるを得ないし、もう、みんな『ジュリー!』以外に言葉がなくなっちゃうんですよ」(島﨑さん)
* * *
我が家のテレビは「おまかせ」機能で、「沢田研二」がキーワードに設定されている番組はすべて(多分)録画されるようにしてある。毎日録画リストチェックは欠かさない。
2018年9月、樹木希林さんの訃報関連記事の編集作業のために、樹木さんが叫ぶ「ジュリー!」をYouTubeで確認したのがきっかけで、全身を“ジュリー沼”に投じて以来の習慣だ。
その機能がこのところ立て続けに働いた。6月9日は「沢田研二 華麗なる世界 永久保存必至!ヒット曲大全集」(BS-TBS、昨年6月13日の再放送)が録れてホクホクしていたら、19日は映画『幸福(しあわせ)のスイッチ』(NHK-BS)も収穫された。
さすがジュリーのお誕生日月間である。BS-TBSによると「視聴者センターには去年の本放送についての感想やお手紙がいまでも寄せられています。再放送も反響は大きい」(コンテンツ編成局)。半端ないコンテンツ力。
だから、とにかく、沢田研二は文化である。
76歳のお誕生日おめでとうございます! ジュリー!
(文中一部敬称略)
(朝日新聞文化部長・渡部薫)