ジュリーは文化である。冒頭から結論を言う。ジュリーこと沢田研二は昭和の芸能界で老若男女誰もが知るスーパースターであり、76歳になった今も、全国ツアーのチケットが追加公演まで完売する現役アーティストだが、敢えて「文化」であると大きく構えたい。それは、ジュリーのすごさが、ファンが体現する元祖“推し活”の文脈から離れて時代の中で読み解かれ、マスの共通認識として定義づけされないことに常々不満を感じているからだ。
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デビューから60年近く歌い続けるジュリーは、その容貌の変化が取り沙汰されたり、長年支持し続けるファンの姿を揶揄(やゆ)気味にモノマネされたりすることはあっても、文化の真正面から論じられることが少な過ぎやしないか。マスメディアは阿久悠、久世光彦らジュリー像の構築に寄与したクリエイターへ捧げるリスペクトに比して、ジュリーを同等に考察してきたといえるだろうか。
75歳にしてバースデーライブが生中継され、名前がSNSのトレンドに上がり、筆者のような新参ファンも日々生み、76歳の誕生日に際しては「何か書け」とライター陣に原稿発注されるほどの存在なのに。
沢田研二を語る良いタイミング
だから、5月14日、朝日新聞のオピニオン面「耕論」で「やっぱりジュリー」と題して音楽評論家のスージー鈴木さん、映画監督の中江裕司さん、ノンフィクションライターの島﨑今日子さんそれぞれの「ジュリー論」が掲載された時は、大げさでなく快哉を叫んだ。
担当したオピニオン編集部の山口宏子記者は、
「ザ・タイガースが再結集した75歳のバースデーライブやBSの特番が話題になり、映画『土を喰らう十二カ月』(2022年)で毎日映画コンクールの男優主演賞を受賞するなど俳優としても改めて注目された。沢田研二を語る良いタイミングだと思った」
と企画のきっかけを話す。
山口さん自身はジュリーの熱烈なファンというわけではない。それでも、
「戦後の大衆文化の世界で、新たな地平を切り開いた圧倒的な存在であることは間違いない。その人物をきちんと考えることは、ファンかどうかは関係なく、新聞の仕事だと考えた」