日本が誇る電池産業での敗北

 まず、電池産業の雄であるパナソニックが車載用電池の世界市場で敗北してしまった。2017年ごろまでは3割程度のシェアで世界1位だったのが、22年には中国のCATL、BYD、韓国のLGエナジーソリューションに抜かれている。23年8月時点で、中国の2社だけで5割以上を占める。

 中国政府がEV化の旗印を高く掲げたことで、電池メーカーが大規模投資と先進的な研究開発に莫大な資金と人材を投入した結果だ。日本は逆にEV化に後ろ向きで、パナソニックも大規模投資に踏み切れず、結局中韓勢に負けてしまった。

 モーターの状況も似ている。ニデック(旧日本電産)は世界のモーター市場では最強だ。EV化の進展は、ニデックにとって大きなビジネスチャンスである。しかし、トヨタがEVをほとんど作らない戦略をとったため、仕方なく、日本ではなく中国にEV用モーターの拠点を設けたが、中国での価格競争に苦戦し、欧米市場へと軸足を移し始めた。日本で大量のEVが生産されれば、一気にモーターを量産化し、その勢いで中国に攻め込む展開になっていたはずだ。ニデックには不運な展開だった。

 EV化には、車両の軽量化が重要になる。電池が重いこともあり、航続距離を伸ばすのに必須だからだ。中国では、そのための競争が激化し、新たな合金の開発などが進んだ。そのための金属産業の高度化が進んでいる。

 また、テスラが採用したことで知られるギガキャストという技術は、これまで100点以上の部品を使って組み立てていた車体の前部と後部などをそれぞれ一つの金型に一気にアルミ合金を射出して成型する技術だ。これにより部品数を大幅に削減でき、製造工程も合理化できる。実は、そのための巨大なダイカストマシンを製造するイタリアメーカーを10年前には中国企業が買収していた。

 他の中国ダイカストマシン・メーカーも参入し、今や、中国自動車メーカーもこの製法を取り入れている。トヨタなどは、これからだが、既に数年の遅れとなってしまった。

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日本メーカーはもう世界に勝てないのか