長寿の世界5大地域の一つに数えられる沖縄。そこに暮らす人たちの長生きの秘密について、生命科学者の早野元詞氏はライフスタイルの面から注目する。早野氏の新著『エイジング革命』(朝日新書)から著者自身のエピソードも交えつつ紹介する。
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老化研究に恵まれている日本
「百寿者」という表現を最近よく耳にします。百寿者、すなわち「センチネリアン」とは、年齢が100歳以上の人のことです。さらにそれを超えて110歳以上の人は、「スーパーセンチネリアン」と呼ばれます。まさしく老いの優等生であるのが、センチネリアンの人々です。
日本では、センチネリアンの人口数が年々増えています。2023年9月時点で、100歳以上の高齢者は約9万2000人います(厚生労働省広報資料〈2023年9月15日付〉より)。
しかも、その9割が女性です。なぜ、女性のほうが長生きする人が多いのか。はっきりした理由は明らかになっていませんが、通説として男性の喫煙や過度の飲酒、過体重の傾向などが原因として挙げられることがあります。他にも男性ホルモンの影響などもいわれます。簡単にいえば、男性ホルモンであるテストステロンのせいで好戦的になったり、交通事故やトラブルに巻き込まれたりする可能性が生じやすいという説です。ちなみにアメリカのデューク大学の研究によれば、テストステロン値の上昇といわゆる危険な行動は関連しているとも示されています。いずれにせよ、遺伝子のたった一つの違いが寿命にどこまで影響するのかは、今後の研究課題の一つです。
ともあれ、日本は老化研究について恵まれた国です。健康診断を含めた生涯にわたる質の高い医療データと、バイオバンクがあるからです。センチネリアンやスーパーセンチネリアンたち超高齢者の研究も多岐にわたって行われていることで、百寿者特有の細胞の存在も、日本の科学者によって近年明らかにされました。具体的には、超高齢者から採取した数千の循環免疫細胞を単一細胞レベルでプロファイリングした結果、ヘルパー機能を持つ「CD4 T細胞」が同定されたという成果です。