阪神・才木浩人
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 セ・リーグでは西舘勇陽(巨人)、パ・リーグでは武内夏暉(西武)、古田島成龍(オリックス)がチームに欠かせない存在となり、他にも古謝樹(楽天)、松本健吾(ヤクルト)、石田裕太郎(DeNA)が初勝利を挙げるなど、今年のルーキーは投手の活躍が目立っている。

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 ただそれ以上に大きな話題となったのが草加勝(中日)、下村海翔(阪神)という2人のドラフト1位投手がトミー・ジョン手術を受けたことではないだろうか。ともに大学時代は日本で一番レベルが高いと言われている東都大学野球で主戦として活躍しており、当時の無理が影響しているのではないかという声も少なくない。ただ同じ東都でしのぎを削っていた西舘、武内が大活躍をしていることを考えると、大学時代の投球に全ての原因があると考えるのは疑問が残る。

 過去にも2019年巨人1位の堀田賢慎が入団直後にトミー・ジョン手術を受けているが、堀田も高校時代は甲子園出場もなく、公式戦でそこまで多く登板していたわけではない。逆に吉田輝星(現オリックス・金足農→2018年日本ハム1位)は3年夏の甲子園大会だけで881球を投じており、地方大会も1人で投げ抜いているが、トミー・ジョン手術を受けるような肘の故障は経験していない。もちろん吉田の例は極端ではあるものの、それだけ投手の怪我を予測するのは簡単ではないことがよく分かるだろう。

 そして近年目立つのがトミー・ジョン手術を受けた投手がその後、大きくスケールアップしているという点だ。前述した堀田は5年目の今シーズン一軍に定着。ここまで12試合(うち6試合が先発)に登板して3勝2敗1ホールド、防御率1.77という見事な成績を残している。他にも主なトミー・ジョン手術経験者で、現在チームの主力となっている投手の今シーズンの成績をまとめてみたところ、以下のようになった(成績は6月11日終了時点)。

床田寛樹(広島):11試合7勝3敗 防御率1.49
才木浩人(阪神):11試合7勝1敗 防御率1.19
島本浩也(阪神):18試合1勝0敗4ホールド 防御率1.98
山崎伊織(巨人):11試合5勝1敗 防御率1.57
東克樹(DeNA):11試合4勝0敗 防御率2.34
種市篤暉(ロッテ):10試合4勝3敗 防御率2.62
西野勇士(ロッテ):9試合4勝4敗 防御率3.76

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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