社長は金融庁の公表資料まで示した。「日本の個人の金融資産は現預金比率が欧米に比べて多く、資産形成が課題」「長期・積立・ 分散投資の推進」などと書かれており、社長は「金融庁の方針にもまさに沿っている」とまで言った。

 金融庁の意向もあり、業界団体である生命保険協会では、22年度から代理店の業務品質を評価して公表する制度を始めた。ただ、手を上げた代理店のみが対象で、代理店が30万円を協会に支払うという仕組みで、評価の中立性にも疑問符がつく。
 

品質検討のWGメンバーに代理店の名

 皮肉なのは、この制度で使用する評価基準や方法の調査・研究を担う「代理店業務品質検討ワーキング・グループ」のメンバーに先ほどの女性を「カモ」にした代理店が入っていたこと。

 社長は筆者に対し、自身がメンバーであることも勧誘が適切だった根拠に挙げていた。さらに驚くのは、この会社を推薦したのは関東財務局だったことだった。

(文中敬称略。肩書は当時のもの)

※この問題の全容については『損保の闇 生保の裏』に記載しています。顛末については同書をご参照ください。記事は一部抜粋です。

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柴田秀並

柴田秀並

しばた・しゅうへい/1987年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2011年、朝日新聞に入社し、現在は経済部記者。金融担当が長く、かんぽ生命保険の不正募集などを取材。社会部調査報道班に在籍中は国土交通省の統計不正や同省OBによる人事介入問題の取材にも携わった。著書に『生命保険の不都合な真実』(光文社新書)、『かんぽ崩壊』(共著、朝日新書)がある。

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