そんなセミナーを、実は生保の乗り合い代理店が運営していることが多いのだ。「お金のお勉強」というハードルの低い入口を用意し、先生・生徒の関係性をつくった後、不必要な金融商品を勧誘し、高額な手数料を得る。
母親から遺産を相続した女性が通ったセミナーを運営していたのも保険代理店だった。女性は「今となっては恥ずかしいですが、金融商品を勧誘する人たちとすら知りませんでした」と悔やむ。この代理店が、女性への販売で得た手数料は640万円に上った。
ほとんどの保険会社は、自社商品の多数契約については、本社から電話で確認をしたり、禁止したりといった自主的な取り組みを一定程度進めている。だが乗り合い代理店であれば、あえて複数の保険会社の商品に分散して加入させてしまえば、生保1社ごとのチェックの網はすり抜けてしまう。
「対応は適切だった」と代理店社長
遺産を相続した女性が通ったセミナーを運営していた保険代理店の社長は取材に「対応に問題があったとは思っておらず、適切だった」と主張した。根拠に挙げるのは契約の際の確認書だ。
「他の会社にはない独自の確認書をつくっており、女性から全て意向通りだとの署名を記入してもらっている」と強調。「女性からの積極的な来店と投資意向による結果」とした。
加えて、女性が一括払いの保険や投信に入ってもまだ資産が残ることから、「月々の保険料が月給よりも高いとしても、(投資のタイミングを複数にわける)『時間分散』の観点からご案内した。余裕資産は十分にあったなかでの事柄であり、問題ない」と主張した。
こうした会社の姿勢に対し、女性は「母から引き継いだすべての資産をリスクのある金融商品に変えるまで勧誘され続けたかもしれない。そう考えると、恐ろしい」。