元音柱の宇髄天元。画像は新宿駅地下・メトロプロムナードの大型広告より。(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

宇髄天元の懸念

 身体的なけがによってハンディを負っているはずの宇髄は、刀鍛冶の里で新たに上弦の鬼を倒した炭治郎より、現段階でまだ「上」にいることが暗に示されるかたちとなった。さらに、宇髄をはじめ、他の柱たちが行う「柱稽古」は、鬼殺隊の「戦闘能力を底上げする」以上の意味がある。それは戦いに向かう「剣士としての心」の醸成、つまり、恐怖克服という課題の解決に他ならない。

 今回の「アニオリ」シーンで、宇髄との夜間訓練場面があった。嗅覚の異能を持つ炭治郎も参加していたが、元忍の宇髄は完璧に気配を消して近づくため、次々と剣士たちが倒されていく。剣士の1人は「無理だ 柱相手に俺たちじゃあ」と泣き言を口にする。すると、宇髄はそっと背後から近寄って、彼の耳元で静かにささやいた。

「鬼に向かっても そう言うつもりか」(宇髄天元/鬼滅アニメ・第3話)

一般隊士に欠けているもの

 アニメ第3話では、訓練をしている隊士たちが、夜間警護に出かけるシーンが挿入されていた。2人1組となって、本当に鬼の出没が停止中なのか探りつつ、市中の見回りをしている、という場面だった。

 ここで、1人の剣士がいたずら心で路地裏に隠れ、警護の相方を驚かすシーンがあった。灯りが遠ざかり、闇がおとずれ、仲間が1人いなくなったのだが、この段階では、ただそれだけ。しかし、残された剣士はひどくおびえ、「呼吸」を激しく乱す。日輪刀を構えようとするまでの動作がおそろしく鈍い。そう、鬼が怖いのだ。

 鬼の上位実力者「十二鬼月」と渡り合える者は、鬼殺隊の中にも、ほんのわずかしかいない。那田蜘蛛山の戦いを思い出せば、それは明らかだ。この時点で、鬼たちはおとなしくしているものの、始まりの鬼・鬼舞辻無惨の血液が適合さえすれば、鬼は簡単に増える。失われた「下弦」も「上弦」にも、新たな者が加わる可能性は十分にあるのだ。そんな状況にもかかわらず、鬼殺隊の一般剣士は鬼が怖くてたまらない者が多くいる。これで十分に戦えるのか。おそらく隠(=鬼殺隊後方部隊)たちも、ほかの者たちも、鬼が怖いはずである。

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