元音柱の宇髄天元。画像はコミックス「鬼滅の刃」9巻のカバーより。(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

宇髄天元が鬼殺隊に必要とされるワケ

 上弦の壱・弍との戦い、無惨との対峙が刻一刻と近づいている。炎柱・煉獄杏寿郎を死にいたらしめた、上弦の参・猗窩座との戦闘も避けることはできないだろう。柱や炭治郎たちが最前線に移動した後、残された鬼殺隊の関係者たちも、「守り」を固めなくてはならなくなるだろう。

 前線から少し離れたところで待機している、隠たち、蝶屋敷の女の子たち、鬼殺隊を支えつつも「戦う術」を持たない者たち。彼らを守り、心の「支え」となる人物が必要になる。恐怖を克服し、皆を力強く鼓舞する存在はなくてはならない。だとすれば、元柱である宇髄天元の存在は、どれだけ心強いものとなるだろう。遊郭の戦いで、上弦の鬼の毒をくらっていた時ですら、宇髄は高らかに勝利宣言し、後輩たちを勇気づけていた。

「余裕で勝つわ ボケ雑魚がァ!! 毒回っているくらいの足枷があってトントンなんだよ 人間様を舐めんじゃねぇ!!」(宇髄天元/10巻・第87話)

 どんな苦難の時も、誰よりも“ド派手に”戦ってくれる、宇髄のあの高らかな声が鬼殺隊にはまだまだ必要だ。鬼殺隊の長・産屋敷耀哉は、「つらいね天元 君の選んだ道は」と彼の苦難に心を寄せながら、宇髄が人を救うために「戦いの場に身を置く」ことに感謝し続けていた。引退というかたちを取りながらも、宇髄にはまだやらねばならないことがある。

 オリジナルのアニメシーンでは、宇髄の声が明るく響いた。一般剣士たちは、宇髄天元のあの「強さ」を学ばなくてはならない。柱稽古はまだまだ続く。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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