クールな印象の髙村社長だが、時折見せる笑顔がやさしかった(撮影/朝日新聞出版写真映像部・上田泰世)

「一つは国策に乗らない手はないということ。新NISAの波は大きい。その大波を受け止めるべく手数料ゼロ革命を仕掛け、顧客基盤を作る必要があると考えました」

 国が低コスト化を重視したこともあり、「新NISAだけ、低コストの投資信託つみたてだけ」という顧客が増えても証券会社の収益は上がらない。

「我々の役割は投資のプラットフォームを提供すること。資産形成を進めていくうちに、もう少し別の投資信託を買おう、債券も気になる、といったニーズが出てきたときに応えます。

NISAでお客さまからいただく手数料がほとんどないことにフラストレーションはありません。できるだけコストをかけずに資産形成をして成功体験をつくってもらうほうが先です」

 目先の小銭はいらない、長期視点、NISAは「きっかけ」。

カード会社7社と交渉

 SBI証券は3月22日、クレジットカード決済の投資信託つみたての上限額を10万円に引き上げることに伴う、新しいポイント付与率を発表した。ポイント付与率はカードの種類によって異なる。

 同社の一番人気は三井住友カードで、2024年10月1日買い付け分までは従来通りの「0.5〜最大5%を付与」とした。

 11月1日買い付け分以降は、三井住友カードの投資信託つみたて以外の利用金額も条件に加えつつ、カードの種類により「0〜最大3%を付与」となる。

 関係法令の改正は3月8日。ライバル社が即日に新たなポイント付与率を発表する中、一番乗りと思われたSBI証券は遅れた。

「ポイント付与に銀行系や流通系などのカード会社さんとの調整が必要です。SBI証券のユーザーはこんな数字を求めているので、この線でお願いします、と。うちの一存だけでは決められない交渉事で、合意に時間がかかりました」

 特にSBI証券は他社(1社1種類のカード)と違い、三井住友カードも含め7種類のクレジットカードから選べる。つまり7社それぞれとの交渉が必要だった。

 クレジットカードつみたての上限が10万円になる=ポイント付与の負担も重くなる。

 SBI証券とカード会社それぞれの負担率は公表されていないが、「これまで通りの条件、そのまま10万円上限で」と頼んでも首を縦に振らなかったカード会社はあっただろう(推測)。

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