アメリカのインフレへの影響も懸念されます。大統領のポジションがトランプ氏からバイデン氏に移った後で、大きく変化したのが不法移民の数です。23年12月における、アメリカの不法移民数は、トランプ大統領時代から約3倍も増加しています。一部の投資銀行は、アメリカが順調に雇用者数を増加できているのは不法移民の存在が大きいとのレポートも出しています。しかし、トランプ氏は不法移民の規制の強化を公約に掲げており、そうなれば人手不足によるインフレが起こる可能性があります。インフレとなれば、本来は金融政策では政策金利を上げることが求められますが、そんな環境で利下げを続ければ……。トランプ氏とFRBとの距離感も注目されることになるでしょう。

 最後に、マクロ経済への影響といえば関税へのスタンスが気になります。バイデン政権からの転換を強調しており、中国製品を締め出すための関税強化、そして日本製を含む外国製品への関税措置を謳っています。台湾有事や安全保障との駆け引きになるのかも注目すべきでしょう。

 特定の産業への影響といえば、やはり気候変動関連でしょう。バイデン政権では、22年8月に脱炭素政策を後押しするためのインフレ削減法を成立させました。そこには、企業の脱炭素に関する設備投資を後押しする政策や、電気自動車を普及させるための施策が盛り込まれています。しかし、トランプ氏はAGENDA47でも掲げたとおり、環境政策の国際的同意を促すパリ協定を脱退する見込みで、気候変動対策への財政出動を抑えることが考えられます。共和党がアメリカ議会の過半数を握るとなれば、規制緩和や減税政策の原資を作るために、トランプ氏はインフレ削減法を根底から覆す決断をするかもしれません。

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ESG投資へのスタンスをトーンダウン