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最近、「もしトラ」という言葉を聞くことが増えました。過激な発言でお馴染みのトランプ氏が、今年11月のアメリカ大統領選挙でもしも当選したら起こることを懸念して、このような表現がされています。今回は、トランプ氏が公表している公約集「AGENDA47」を参考にしつつ、「もしトラ」が経済や資本市場にどのような影響を及ぼすのかについて考察します。

 トランプ氏とバイデン氏の大きな争点の違いは、やはり2025年に切れる減税政策の行方でしょうか。トランプ氏は大統領時代の17年に、法人税を35%から21%に、所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げる時限措置の税制を成立させました。トランプ氏が再び大統領になれば、支持率向上のためにこの減税政策を恒久化するかもしれません。そうなれば、多くのアメリカ企業が潤うことになり、日本の輸出産業、そして金融市場にはプラスの影響が期待できるかもしれません。

 ただし、嬉しいことばかりではありません。最近のトランプ氏はドル高の現状に対して明確にNOを突きつけています。AGENDA47には、自動車産業の救済、排ガス規制の緩和が盛り込まれており、トランプ氏はアメリカ自動車産業の追い風になるようドル安を求めているようです。なので、彼が大統領になれば、FRB(アメリカの中央銀行)に利下げを続けろと圧力をかけることで、一時的にドル安円高トレンドが起こるかもしれません。円安の影響で絶好調である日本の輸出産業にとっては有り難くない状況でしょう。

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崔 真淑

崔 真淑

エコノミスト。2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。16年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。18年より同大学の博士後期課程に在籍。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後に、「経済のスペシャリストの世界に触れたい」と、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。アナリストとして資本市場分析に携わる。当時最年少の女性アナリストとして、NHKなどの主要メディアで経済解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験したのち、日本の経済リテラシー向上に貢献したいとの思いから2012年に独立。経済学を軸に、経済ニュース解説、経済・資本市場分析を得意とするエコノミスト・コンサルタントとして活動。

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トランプ氏とFRBとの距離感も注目