また、共和党が伝統的に強いとされるテキサス州では21年に、フロリダ州で23年にアンチESG(環境・社会・企業統治)法を制定していることも気になります。この州法は、州の年金基金や他の資産運用機関が化石燃料に敵対的と見なしている企業やファンドに投資することを、差別的として禁じるものです。同時に、テキサス州では22年に、ESGを過度に重視して化石燃料企業を排除している投資会社のブラックリストを作成しました。

 これにより、世界で最も運用金額が多いとされるブラックロック社は、テキサス州からの資産運用依頼が減っては困るとばかりに、ESG投資へのスタンスをトーンダウンしています。実際、この動きから海外メディアでは問題ばかりのESG投資ブームに警鐘を鳴らしたり、ESGに代わる新しい社会に優しい投資スタンスを作るべきという報道をしたりもしています。トランプ氏が大統領になった場合、脱炭素ブーム、ESG投資ブームに大きな影響が起こるかもしれません。

 ちなみに、脱炭素に積極的とされる欧州諸国でも脱ロシアがうまくいかず、脱炭素への優先順位を下げる可能性も起こりつつあります。「もしトラ」は、世界に大きな影響を与えそうです。

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崔 真淑

崔 真淑

エコノミスト。2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。16年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。18年より同大学の博士後期課程に在籍。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後に、「経済のスペシャリストの世界に触れたい」と、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。アナリストとして資本市場分析に携わる。当時最年少の女性アナリストとして、NHKなどの主要メディアで経済解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験したのち、日本の経済リテラシー向上に貢献したいとの思いから2012年に独立。経済学を軸に、経済ニュース解説、経済・資本市場分析を得意とするエコノミスト・コンサルタントとして活動。

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