島﨑信長さん(撮影/加藤夏子)

現場での「手作り」が大きい 

「生きた人間として見せたい」と、どのキャラクターを演じるときも考えています。単なる「キャラクター」ではなく、その世界に生きている人間にしたい、とずっと思っています。作品や周囲の人たちに恵まれたこともあると思いますが、そんなスタンスで作品に関わってきました。

──声優の仕事は現場でのセッションだという。

島﨑 声優はいろいろな声を用意して、現場でその声をあてはめている、と思われる人が多いかもしれませんが、実は、現場で手作りしているところが非常に大きいんです。

 例えば、玲王が凪に5メートルぐらいの距離感で話しかけていると思って家で練習していたのに、現場で10メートルぐらいの距離感で話しかけられたら、すぐに10メートルの距離感で返さなければいけません。相手のセリフを悲しさが宿ったものと想定していても、明るさを宿して言われたら、自分のセリフのトーンも変わります。

 声の演技は、自由に手作りを重ねるセッションなんです。

 同じ設定でも、作品によって芝居も変わります。

キャラクターの人生を埋める

 写実的なアニメ作品と、必殺技を繰り出すようなザ・王道のバトルアニメでは、キャラクターが生きている地平が違います。同じものを見た時のリアクションひとつ取っても、「え?」と言うのか、「はっ!」と息を呑むのか、さまざまなアプローチがあります。

──演じるキャラクターを「生きた人間」として見せるため、毎回、キャラクターの人生を自分なりに埋めていくという。

島﨑 予想していない球が来たときにも、島﨑信長が役者としてどう返すかではなくて、凪 誠士郎の反応が出ないといけない。そして、どんなセリフも、その役が歩んできたこれまでの人生があったうえで、その時に感じたものから出た一言のはず。だから、役の人生を自分なりに埋めてから、そのシーンごとの“生々しい感情“を現場で手作りしています。

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一言しかセリフがなかったら