ただ、セルフカバーを聞く前には「少し不安もあった」と言う。

「体調も芳しくないとも報道もされていた時期もあったので、そもそも歌うこと自体が大丈夫なのか不安、というか心配もありました……」

 だが、Kayaの不安は全くの杞憂だった。

「年末に歌唱動画がアップされてすぐに拝見して、変わらぬ歌声にまずは感動しました。元気そうに笑う姿も映し出されていて“これは2024年幸先いいわー!”って(笑)感じ。

 不安だった一方で、『北ウイング』をどういう風にセルフカバーしてくるのかなって、すごくワクワクしていたんですね。どういう歌唱法でくるか、中森明菜さんファンとしても、ひとりのシンガーとしてもすごく気になっていました。その歌声は、本当に心のこもった丁寧な歌い方で、さらなる進化を遂げられた印象を受けました」

中森明菜公式YouTubeチャンネルAKINA NAKAMORI OFFICIALにアップされている【公式】中森明菜「北ウイングーCLASSICー」。円熟味が増して、Kayaのいう「進化」が見える


 Kayaは、2002年MALICE MIZER(マリスミゼル)のManaのプロデュースにより、ユニット『Schwarz Stein』のボーカルとして活動を開始した。尊敬する女性アーティストたちの楽曲をカバーしたアルバム『DRESS』には、中森明菜の『ミ・アモーレ [Meu amor e……]』『難破船』を収めている。

中森明菜の「進化」

 Kayaは『北ウイング―CLASSIC―』にどんな「進化」を見出したのだろうか。

「2000年代以降、中森明菜さんは地声をおさえたファルセットを多用した歌唱をされていました。その歌い方もとても上品で、私は大好きです。

 でも、昔からのファンは、例えば「禁区」や「DESIRE -情熱-」など、地声を使ったパンチのある歌い方の曲もまた聞きたいなという気持ちもあると思います。

『北ウイング―CLASSIC―』は、2000年代の歌唱法の全面ファルセットでくるのかなと思っていました。ところが、ファルセットでもなく地声を張って歌うのでもなく、ものすごく丁寧に心を込めて歌っている。優しいのだけれど力強いという印象。ここ数年の中森明菜さんの歌で聞いていなかった感じがありました。

 そういう意味での“進化”を遂げている感じがしました。“令和の明菜さん”を見つけた気がして、これはこれで心から素敵だなと思いました」

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