「3回目のデートで告白する」のがアプリのセオリー。「次の約束を取り付けたときは、『いけた』と思った」と31歳男性(写真/Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

「怪しい」というイメージも今は昔。わずか数年で主流となったマッチングアプリだが、若者の間では使い方に変化が出ている。最前線を追った。AERA 2024年5月27日号より。

【図を見る】世代別「マッチングアプリを使う理由」はこちら

*  *  *

「エターナル・サンシャインじゃなくて、ハリー・ポッターのほうがいいよ」

 大手企業に勤める男性(31)は、東京・中目黒の卓球ラウンジでそう言われたことをはっきりと覚えている。

「エターナル・サンシャイン」は2005年に公開された映画で、けんか別れをした元恋人が過去の思い出を消し去るために記憶除去手術を受けたと知り、自らもその手術を受ける男の物語。04年度の米アカデミー脚本賞も受賞した名作だ。

「別れた恋人のためにもがくジム・キャリーの姿がいとおしくて、昔の恋人を追い求めた経験がある人なら誰でも応援したくなるところがぐっとくるんです。誰だってそんな経験、ありますよね?」

 そう熱弁する男性が「エターナル・サンシャイン」好きをアピールしていたのは、マッチングアプリの自己紹介欄。作品が好きだったことはもちろんだが、おしゃれな人だと思ってもらえるのではないかという下心もほんの少し、あった。

「でも、プロフィルを見た友人からは、『マス(多数)に向けたほうがいい』と言われて……」

 その場で、「ハリー・ポッター」に書き換えた。

 男性がアプリを活用しはじめたのは、20年。ちょうど恋人と別れた直後で、世界をコロナ禍が襲った頃だった。

「一人で自宅にこもっていると、ふとした瞬間に寂しさがこみ上げてくるんです。『まじで死ぬかも』って思いました」

 後悔したところで復縁できるわけもなければ、コロナ禍が収まる気配もない。一人はもう耐えられないと、「ペアーズ」の有料会員になった。

“添削会議”が奏功

 だが、道のりは険しかった。

 20人近い女性とデートをしたものの、その先に発展する気配はなし。そこで友人とその妻らと始まったのが、冒頭の“添削会議”だった。

次のページ