5月9日、中国新聞は2013年7月の参院選で当時首相だった安倍晋三氏が、東日本の選挙区で党内の公認候補の応援に入ったときに、現金100万円を渡していた疑いがあると報じた。同紙は複数の元政権幹部への取材として、その金は内閣官房機密費(機密費)から支出されている可能性も示唆した。昨年末に発覚したパーティー券による裏金事件に続き、またしても自民党による「政治とカネ」の問題。これまでもずっと機密費や自民党の選挙資金に流用されてきたのか、また、選挙応援を受けてきた当事者らはどう考えているのか。当人に取材した。
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機密費とは、政府の施策の円滑な遂行を目的として認められる経費のことで、官房長官が管理する。毎年の予算額は約12億円で、そのうち領収書不要で官房長官の判断で使うことができる「政策推進費」は約11億円もある。「赤旗」などの報道によると、第2次安倍内閣が発足した2012年12月から岸田政権下の23年6月まで、ほぼ全額を使い切っており、公金の“私物化”も問題視されてきた。
中国新聞の取材に対して、元内閣官房副長官が匿名で語ったところによると、「機密費を選挙に使うことがあると思う」とし、「国政選挙の陣中見舞いとして100万円を渡すことがあった」と答えている。
政治評論家の有馬晴海氏は今回の報道に関してこう話す。
「100万円なんて氷山の一角でしょう。選挙には事務所代、会場費、電話料金など、とにかく金がかかる。それだけでも数百万円は軽く超えます。候補者は自分にどれくらいの票が入るかわからない状態で選挙活動をしているので、何か施策を打って票を獲得できるのであれば、どんどん金を注ぎ込みます。だから、あればあるだけ金を使うのが実態であり、『いくらあれば足りるか』という話にはならないのです。3億円あっても足りないと話す議員もいます」