炭治郎が「長男として」戦う理由
こんなにも優しい炭治郎であったが、彼は鬼殺を続けなくてはならない。本来であれば、竈門家が鬼に襲撃された時点で、炭治郎は亡き父の代わりに、長兄として母や弟妹を守らなくてはならなかった。しかし、自分だけが無傷で生き残ってしまったのだ。
もともと責任感が強い炭治郎の中で、「長男なのに」という思いがどんどん大きくなっていく。炭治郎の有名なセリフにこんな言葉がある。
<すごい痛いのを我慢してた!! 俺は長男だから我慢できたけど 次男だったら我慢できなかった>(竈門炭治郎/3巻・第24話「元十二鬼月」)
長男だろうが、次男だろうが、長女だろうが、末っ子だろうが、そんな属性は「肉体的苦痛に対する我慢強さ」とは本来関係ない。しかし、炭治郎は長兄として果たせなかった“約束”を守るために、今度こそは妹を救いたいと、激しい痛みに耐えながら自分を鼓舞するのだ。一見するとコミカルなセリフであるが、その裏側にある炭治郎の自責の念は強い。
ときに頑固で激しい怒りも
一方で、炭治郎には頑固で気の強い一面もある。それは彼の「正義感」から生まれたものだ。鬼殺隊入隊試験「最終選別」で、同期の不死川玄弥(しなずがわ・げんや)が少女に暴力を振るった際、それを止めに入っているが、乱暴な制止の仕方だった。
<この子から手を放せ!! 放さないなら折る!!>(竈門炭治郎/2巻・第8話「兄ちゃん」)
さらに「柱合裁判」の時には、妹に乱暴した不死川実弥(しなずがわ・さねみ)にも怒鳴りつけている。
<善良な鬼と 悪い鬼の区別もつかないなら 柱なんてやめてしまえ!!>(竈門炭治郎/6巻・第45話「鬼殺隊柱合裁判」)
実弥は玄弥の実兄で、鬼殺隊の風柱であるが、炭治郎はおかまいなしだった。鬼であろうと、目上の人間であろうと、同期だろうと、許せないと感じたことに怒る胆力と意思の強さが炭治郎にはあった。