イスラム組織ハマス支配下のパレスチナ自治区ガザ地区で、イスラエルによる空爆が続いている。このガザ戦争に対する米国、欧州、日本などの対応に、危機意識の欠如が見られるという。AERA 2024年5月20日号より。
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2023年10月7日のパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル南部への大規模な越境攻撃。それに対するイスラエル軍の報復攻撃が続く。7カ月目の5月7日、ガザの死者は約3万5千人に達した。現地では食料や人道支援物資が入らず、110万人が飢餓に瀕している。ずらりと並ぶ遺体、見渡す限りの廃墟、栄養失調の子どもたちなど、ガザの惨状は日々インターネットを通して世界に発信されている。
私は朝日新聞記者として1994年にカイロに赴任し、オスロ合意によってガザでパレスチナ自治が始まるのを取材して以来、繰り返しガザに入った。この7カ月間のガザ戦争に対する国際社会、特に米国、欧州、日本などの対応を見ると、危機意識の欠如を感じざるを得ない。
「国際社会の平和と安全の維持に対する脅威となる」
戦争開始から2カ月後の23年12月6日、国連のグテーレス事務総長は、ガザでの人道危機の悪化を食い止めるために、国連憲章99条に基づく「人道的停戦」を求める書簡を国連安全保障理事会に送った。99条に基づく停戦要請は国連の歴史で50年ぶりだった。
ハマスによる越境攻撃ではイスラエル人約1200人が殺害された。その時すでに、イスラエル軍による空爆と地上戦で、パレスチナ人の死者は1万5千人を超えていた。グテーレス氏は、こう訴えた。
「ガザ全域の220万の人口の8割は家を失い、110万人が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)施設に避難している」
だが「人道的停戦」決議案は安保理の採決で日本を含む13カ国が賛成したものの、米国の拒否権行使で否決された。