2024年3月7日、ガザ地区でイスラエル軍の空爆によって破壊された住宅跡地に立ちすくむパレスチナ人たち。街中が廃墟になりつつある(写真:AP/アフロ)
2024年3月7日、ガザ地区でイスラエル軍の空爆によって破壊された住宅跡地に立ちすくむパレスチナ人たち。街中が廃墟になりつつある(写真:AP/アフロ)

 イスラエルはハマスの越境攻撃に対して「自衛権を発動する」としてガザ攻撃を始めた。これを米欧・日本は支持。死者が増え続け、その7割が子どもと女性という国際法違反を疑わせる集計結果が出ても「自衛権支持」は変わっていない。

人道支援担う国連機関へ、日本と米欧は拠出停止

 一方、南アフリカは12月29日、イスラエルのガザ攻撃がジェノサイド(大量虐殺)防止条約に違反しているとして国際司法裁判所(ICJ)に訴えた。ICJは1月26日、暫定措置としてイスラエルにジェノサイドを防止するために「全ての措置」を講じることを求める判断を示した。

 この判断が出た頃、イスラエルが「ハマスの越境攻撃にUNRWA職員が関与した疑いがある」と告発した。これを受け、米英独仏伊などG7諸国はUNRWAへの資金拠出停止を決め、日本も同調。米国のイスラエル支援政策に引きずられたのか、人道援助を担う国連機関への拠出を停止したのである。

 この時、ノルウェーは支援継続を決め、エイデ外相は、

「極度の人道的苦境の時にUNRWAへの資金提供の削減による広範な影響を考慮するよう求める。何百万人もの人々を集団的に懲罰すべきではない」と述べている。これが当たり前の人道と外交の感覚であろう。

 UNRWAへの拠出停止は2月末までに16カ国に上り、ラザリニ事務局長が「このままでは2月末に活動停止に追い込まれる」と窮状を訴えるほど、状況は悪化。3月上旬になって、カナダが拠出再開を決め、日本も4月2日、「ガザの人道状況が悪化の一途を辿っていることへの強い危機感」(上川陽子外相)として再開を決めた。

 UNRWAの独立調査委員会は4月下旬、一連の疑惑に関する調査報告書を公表した。組織の中立性を評価した上で、職員がテロ組織に加担しているというイスラエルの主張について「証拠が提供されていない」とした。つまり、日本も含めて米欧主要国は確たる証拠もなく、危機の最中に資金拠出を停止していた訳である。

 米欧の政府内では、自国の方針に疑問の声が上がっているという。

 2月初め、英国放送協会(BBC)は、米欧11カ国の800人以上の現役高官がガザ戦争に関する自国政府の政策は「重大な国際法違反」になりかねないと警告する声明に署名したと報じた。声明文には「我々の政府の政策が重大な国際法違反、戦争犯罪、さらには民族浄化やジェノサイドに加担している可能性がある」とあった。

 危機意識の欠如は日本も同じだ。ガザの人道危機は、我々日本人にとって決して他人事ではない。(中東ジャーナリスト・川上泰徳)

AERA 2024年5月20日号より抜粋

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