「高校生は様々なことに興味・関心を持つ時期で、服やファッションに対してもそうでしょう。しかし、経済的な自立はできていません。私服では家庭環境によって大きな『差』や『負担』が生まれることも想定されます」
弁護士、兵庫教育大学大学院准教授で、私立中高一貫校教員でもある神内聡さんもこう話す。
「制服の選択肢を広げる取り組みは必要ですが、私個人は制服の着用義務自体には肯定的です。制服はTPOを守るひとつの手段です。私服を導入してもそれを理由に生徒間の力関係が生じず、TPOも乱れにくい学校ならば私服もアリでしょうが、難しい学校もあると思います」
実際、地域差はあるが、私服を導入している高校には比較的学力の高い学校が多い。また、生徒自身が制服着用を望んでいる面もある。神内さんは続ける。
「かつてある中学校で調査したときは、ほとんどの生徒が制服を希望しました。『制服なら個性を競わなくていい』という理由が中心です。制服・私服選択制を導入しても、マスク着用と同じように周囲に同調して選択が偏り、少数派の居心地が悪くなるかもしれません」
1879年に学習院が日本最初とされる学生服を導入してから、140年以上がたった。多様な性自認やジェンダーへの配慮が当然に必要なことはもはや論をまたないが、その先に制服制度がどうあるべきか、改めて議論が必要なときだろう。(編集部・川口穣)
※AERA 2023年4月10日号より抜粋