ただそんな大阪府大会の準決勝だったが、レベル的には決して高いものではなかったことは確かだ。筆者は評判の今坂のプレーを確認するために現地で試合を見ていたが、観客からは「(大阪)桐蔭と履正社がおらんと迫力がないわ」という声が聞かれた。長年関西で高校野球を取材している記者も「(二強以外の)大阪のレベルは高くない。大阪桐蔭もセンバツとはメンバーを入れ替えて色々試しているようだった」と話している。
それを裏付けているのが投手のスピードだ。準決勝に登板した投手は4チームで6人いたが、140キロはおろか、135キロ以上をマークした投手も一人もいなかった。大阪はメイン会場となる大阪シティ信用金庫スタジアムが両翼100メートル、センター122メートルでフェンスも高く、さらに低反発の金属バットが導入されたことでホームランや長打がより出づらくなっており、制球力に長けた投手が起用されたということもあるが、全国でもトップの激戦区の準決勝でこの数字は寂しいものである。
この春は大阪以外に埼玉、栃木の準決勝を現地で見たが、ほとんどのチームが140キロ前後をマークする投手を揃えていた。もちろん投手のストレートの速さとチームのレベルはイコールではないものの、打撃や守備についても決してハイレベルという印象は受けなかった。
その背景にあるのはやはり二強が近年突出した成績を残してきたということである。プロ球団のスカウトはこう話す。
「関西は中学野球のレベルも高いですが、大阪で甲子園に出ようと思ったら大阪桐蔭か履正社以外からは難しいというのが共通の認識になっています。この2校と縁がなかった選手は甲子園に出るためには他県の強豪校に行った方が確率は高くなると判断しますよね。甲子園に出ている関西以外のチームにも関西出身の選手は多いじゃないですか。そうなるとどうしても二強と他のチームの差は開きます。特に大阪桐蔭は関西だけじゃなくて、他の地域の力のある選手も多く入ってきますから」