動こうとしない本人を、何とかしたいという気持ちはわかるが、そこで急き立てても、これまでしてきたことを、またやってしまうだけである。

 そういうときには、むしろ親や周囲の者が、自分を振り返る作業をし、本人へのかかわり方を変えていくことに取り組んだ方がいい。それゆえ、筆者のクリニックや提携するカウンセリングセンターでは、まず親や家族へのサポートに力を注ぐ。接し方を単に指導するというのではなく、親自身のカウンセリングを行い、親自身の問題に取り組んでもらうと、不思議なことに、子どもとの関係がいつの間にか改善し、子どももカウンセリングを受けてみようということになるケースが多い。

理想や期待よりも、目の前の機会に乗ってみる

 回避性の人が回復し始めたときに、しばしば起こるのは、それまで抱いてきた大きな理想や願望にこだわるのをやめて、その人の前に提供された小さなチャンスに思い切って乗ってみるということだ。それまでのその人であれば、自分が本当にやりたいことと少し違っているとか、負担が増えて大変ではないかとか、うまく行きっこないとか、失敗してがっかりするのが落ちではないかといった、マイナス面ばかりを考えて、結局何もしないということになりがちである。

 しかし、自分の理想とする願望というものは、いきなりそのまま実現することは決してない。無数の小さなステップを踏むことで、大きな成功も成し遂げられるのであり、一足飛びに大きな達成や成功を得ようとしても無理である。それに、万一そうしたチャンスが舞い込んだとしても、小さなステップを踏みながら実践の中で鍛えられていないと、チャンスを生かすことができない。理想とはとてもいかないが、ちょっとだけ面白そうだとか、面倒なことも増えるが、新しいことにも出会えそうだといったことが、身近に訪れたら、試しにやってみる。

 チャンスというものは、自分から切り開くことも大事だが、案外、外側からきっかけが与えられることが少なくない。ことに回避性の人にとって、自分から売り込んでいって、計画を実現するような離れ業は、ちょっとハードルが高すぎて、やりこなせるものではない。

 そんな無理な目標を掲げるよりも、身の丈にあったことをした方が楽だし、結果的にうまくいく。遠くの大きな目標ではなく、身近に訪れる小さなチャレンジを、思い切ってやってみる。それが、思いもかけない大きな変化に化けたりする。

暮らしとモノ班 for promotion
【10%オフクーポン配布中】Amazonのファッションセールで今すぐ大活躍する夏のワンピやトップスを手に入れよう!