※写真はイメージです。本文とは関係ありません(Mladen Zivkovic / iStock / Getty Images Plus)
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 生きるのが面倒くさい――。人の世の煩わしさから逃れたいという願望をもち、現実の課題を避けようとする傾向を「回避性」という。自分への自信のなさや人から馬鹿にされるのではないかという恐れのために、社会とかかわることや親密な対人関係を避けることを特徴とする状態である「回避性」だが、克服可能だと断言するのが、精神科医の岡田尊司氏だ。そのカギになるのが、「安全基地」と「小さなチャンスに乗ること」だ。実際の事例を、岡田氏の著書『生きるのが面倒くさい人』(朝日新書)から一部を抜粋・改編して解説する。

回復のカギを握る「安全基地」

 軽度の発達課題を抱え、否定されたり、失敗したりする体験をするなかで、回避性が強まっているというケースも多い。発達面の課題をきちんと評価し、診断することが、事態の転換点になる場合もあるが、それを転換点にできるかどうかは、そのときの対応にかかっている。ともすると、発達面の問題だけを見がちで、診断して終わりということも少なくない。発達の課題もさることながら、それ以上に、本人の力を奪うのは、両親などの否定的な評価と結びついた自分自身への失望と自信喪失である。両親などの見方や対応が変わることが、回復には不可欠だ。

 そして何よりも重要なのは、助けを求めることを諦めて、自分の殻に閉じこもるのではなく、助けを求め、相談することである。回避型や恐れ・回避型の愛着スタイルをもつ人では、人に頼ったり相談したりすることができず、その結果、行き詰まって身動きが取れなくなってしまうということが多いのだ。

 困ったことがあれば、人に相談するということをすっかり身に付けると、大きなストレスを受けて暮らしていても、つぶれることもなく、難題や困難がつぎつぎ降りかかってきても、粘り強く何とか乗り越えられる。

 この点が、筆者が重視している「安全基地」としての機能であり、安全基地がうまく機能するかどうかが、その人を強くもするし、弱らせもするということだ。周囲に安全基地となる人が増え、その機能が強化されることで、勇気を出して、前に進めるようになるのである。

 この点は、発達課題の有無に関係なく、当てはまることだが、より過敏でストレスを感じやすく、孤立しやすい発達課題を抱えた人にとっては、より重要になると言えるだろう。

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安全基地機能を高めるためには?