「妊娠は夏以降に」—管理職から指示された妊娠時期

 2018年の春。関東地方の私立小学校の教員だった30代の女性は、荒れたクラスの学級運営や保護者対応に、疲れ果てていた。「担任からおろしてほしい」。管理職に何度も訴えた。「仕事でうまくいかなかったことは、仕事でしか上書きできない。自分のためにも乗り切って」。返ってくるのは、そんな言葉ばかり。絶望感が募った。

 ストレスからか、嘔吐を繰り返し、起き上がれない日もあった。

 何とか乗り切り、ようやく担任期間が終わろうとしていた19年の春。不妊治療をしていることを管理職に打ち明けた。2年ほど治療を続けていたが、子どもを授かれずにいた。年齢的にも、先延ばしできない。夫婦とも検査結果に異常はなく、医師からは「ストレスが原因かもしれない。働き方を変えて」と言われていた。

 管理職に打ち明けて数日後、呼び出され、こう告げられた。

 「妊娠は夏以降に。年度途中で産休に入るのは、保護者の心証が悪いので避けて」

 「仕方がないな」と思う一方で、「そんなこと言われるんだ……」と失望した。コロナ禍で負担がいっそう増すなか、その後も勤務を続けたが、もう限界だった。

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