利用対象として身近ながら、実態は知られていないコールセンター。本書は新聞記者が取材を通じ、内部の風景に迫ったものだ。
 本編は、沖縄のとあるコールセンターにおける日常風景から始まる。直接客に会う機会はないが白シャツ・黒いスカートかパンツは義務着用、職場に持ち込んでいいのは透明な小バッグのみ……。内勤仕事に伴う自由なイメージとは程遠い実態に、言葉を失う。さらにセンターに勤める400人のオペレーターのうち9割以上はいわゆる非正規雇用層で、離職も絶えない。ただ、こうした職場ばかりが意図的に取り上げられるわけではない。コールセンターは「顧客ニーズを捉える場」と認識し、原因究明や文書報告に力を入れる大手食品会社の事例なども登場する。しかし、社会全体で見ればこうした会社はまだまだ少ないのが現状だ。
 著者はおわりに、コールセンターを「サービス社会のひずみが現れた最先端の『現場』」と評価する。どこにでもあるが、だからこそ日常に埋もれる労働の「痛み」を直視させる一冊だ。

週刊朝日 2015年12月4日号