トイレの換気扇にあったわずかな「すき間」をコーキング剤でうめる鈴木さん(撮影/大谷百合絵)

まさか! 前日の業者が玄関先に……

 Aさんの話を聞き終えた鈴木さんは、まずはゴキブリの侵入経路を特定すべく、キッチンやトイレの換気扇、流し台や洗面台の下の水栓周りなどを順番に確認していく。Aさんと費用を相談しつつ、侵入経路の可能性が高い「すき間」を、粘着性のシートやコーキング剤と呼ばれる詰め物でふさいでいった。優先順位が低く、すき間を埋めなかったキッチンの換気扇内には、ベイト剤と呼ばれる毒餌を設置した。

 鈴木さんの作業中、ゴキブリの成虫や卵はもちろん、住みついている痕跡も一切見当たらなかった。前日の業者に対して、返金依頼などの行動を起こすのかとAさんに尋ねると、既に策を講じているという。

「クレジット決済のとき、業者がカードリーダーを持っていなくて、代わりにカード番号とセキュリティー番号を聞かれたんです。でも有効期限は聞かれなかったから教えずに、業者が帰った後すぐにカードを止めました。今朝は消費者センターに相談して、クーリングオフすることにしたので、お金はとられずに済みそうです。業者には、『有効期限教えて下さい』ってショートメールで追いかけられてますけど、無視してて……」

 そんな話をしていると、突然「ピンポーン」とチャイムが鳴った。インターホンの画面を見て、「あ、まさに昨日の人だ!」とAさん。なんと、代金を回収しそびれた作業員本人が、再び訪ねてきたのだ。

 Aさんは玄関で応対し、消費者センターやカード会社に連絡の上クーリングオフすることや、ちょうど別の業者が家にいることを伝えると、作業員は「そうですか……」とそそくさと帰っていった。

 一連のやりとりを聞いた鈴木さんは、「この時期(悪徳業者が)増えてくるんですよ」と話しはじめた。

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100万円を請求され、作業員を説教