効果を信じて続けている習慣が、実は間違いだったということもある。睡眠に関する誤解について、専門家に聞いた。AERA 2024年5月13日号より。
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健康には欠かせない睡眠について考えてみよう。
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座の三島和夫教授は、こんな提案をする。休日にアラームをセットせず、カーテンを閉じて、ゆっくり寝る。二度寝、三度寝をした合計と平日の平均的な睡眠時間を比べてみるのだ。
「3時間以上長い場合、体に負担になる睡眠不足が蓄積していると考えていい。『寝不足に強い』と思い込んでいる人は結構いますが、それは眠気に鈍感になっているだけ。危機感が薄く、生活を改めないため、むしろ危険です」(三島教授)
睡眠不足はパフォーマンス低下や疲労感蓄積につながるだけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、がんや認知症、うつ病とさまざまな弊害を及ぼすことが国内外の研究でわかっている。その一方で流布しているのは“トンデモ睡眠知識”だ。ネットなどで紹介されている短時間睡眠法について三島教授は、
「長く睡眠障害の診療や基礎研究に携わってきましたが、効果的で安全な短時間睡眠法に出合ったことは一度もない」
と断言し、こう続ける。
「『深い睡眠(ノンレム睡眠)が出れば質の良い睡眠』という話もよく耳にしますが、では“質の良さ”とは何をもって言うのか。睡眠不足の日が何日も続くと、誰でも深いノンレム睡眠の割合が増え、ぐっすり眠るようになる。しかし睡眠不足による害は解消されていません」