アメリカを訪問した岸田文雄首相の米議会の上下両院合同会議での演説は、かつてないほど好評で、拍手でもって支持された。それは、安全保障において「米国と共にある」「日本も責任を担う」と力強く宣言したことが大きい。だが、安全保障については、日本国民と、政府の認識との間には大きなギャップがあるようだ。この点について、シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」代表で、弁護士(日本・ニューヨーク州)の猿田佐世さんが寄稿した。
【5月3日の写真】この様子を見ても「日本国民は変わった」といえるだろうか
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4月、岸田文雄首相はワシントンを訪問し、日米首脳会談を行い米議会で演説した。共同声明では日米で自衛隊と米軍の作戦・能力統合のため指揮統制の連携強化を発表。議会演説においては、岸田首相は、ここ数年の日本の急速な防衛力強化をアピールし、日本は米国と共にあると訴え、日米は地域に限られないグローバルなパートナーであり、日本も責任を担うと宣言した。
幾つもの米メディアが、日本は平和主義から脱却した、真の意味で米国との防衛パートナーになろうとしている、などと報じている。確かに、この岸田首相の演説を聞けば、日本は、増強した軍事力を手に、日本から遠い地域の出来事に米国と共に関わることもいとわないのだ、と捉えるだろう。
戦後長らく日本は、平和憲法の下、「専守防衛」を安全保障の基本方針とし、自衛のための必要最小限度の実力しか有さないとの防衛政策を取ってきた。しかし、近年、拡張主義的な中国や北朝鮮の核・ミサイル実験など不安定な地域の安保環境に鑑み、急速に防衛力強化が図られてきた。2014年には集団的自衛権の行使を認め、2022年には安保関連3文書を改定して敵基地攻撃能力の保有や防衛予算の倍増を決定するなど、「歴史的な大転換」と報じられる政策変更を何度も行ってきた。