もっとも、日本国民の多くは、「平和国家」であることを国のアイデンティティとしてきた。「米国との防衛パートナーとしてグローバルな責任を担う」という政策は、つい10年前の日本の安保政策とは激しく異なるものである。国民はこれを受け入れているのだろうか。

  この4月に発表された読売新聞の世論調査の結果を見てとても驚いた。

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 例えば、2015年に政府は集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法を成立させているが、これについて、この世論調査では評価する人が49%、評価しない人が48%と結果が拮抗していたのである。既に、2015年から約10年が経っており、その間、政府は、この安保関連法に加えてさらに多くの防衛力拡大の政策変更を繰り返し行って今に至っているにもかかわらず、である。しかも、読売新聞は、歴代首相の中でも保守色の強い安倍晋三首相(当時)が、自分の考え方を知るには読売新聞を熟読してほしいと国会で言った通り、保守を代表する新聞である。一般的に世論調査の結果は質問次第で大きく変わるとされており、読売新聞の世論調査の結果は保守政権である政府寄りに出ることが多いとされている。その読売新聞の世論調査において、いまだ回答者の半数が安保関連法に「反対」と答えているのは衝撃である。

安倍晋三元首相

  他にも、この世論調査では、反撃能力や防衛予算の倍増を決めた2022年の安保三文書の改定を評価する人(どちらかといえばを含む)が50%、評価しない人(同)が48%で拮抗、今年3月の防衛装備移転の輸出制限の緩和についても評価しない人は49%、評価する人が47%で、これまた拮抗していた。「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則については、今後も守るべきとする人(同)が73%に上っている。

 質問が異なるために他の世論調査と単純比較はできないが、他の例を挙げれば、中道といってよいであろう時事通信の調査(2023年)では、殺傷能力のある武器輸出の緩和については反対が60.4%、賛成が16.5%だったし、新聞通信調査会(同年)による世論調査[6]では防衛費増額については反対(同)が55.5%、賛成(同)が42.8%であった。また同調査では、台湾有事の際に「自衛隊が米軍とともに中国軍と戦う」とする人は13.3%にすぎなかった。

  また、例えば、安保環境の悪化が叫ばれる中、防衛力の強化自体を支持する国民が多くなっているのは、社を問わず一般的な世論調査の傾向であるが、先の読売新聞の世論調査で「防衛力強化のため、政府は、どのようなことに重点的に取り組むべきか(複数回答)」との質問において、政府がこの間前面に打ち出している「長射程ミサイルの開発」については26%、「次期戦闘機の開発」については13%の支持しかなく、12ある選択肢のうち40%以上の賛成を得たのは、上位から順に、「同盟国や友好国との連携(58%)」、「ミサイル防衛システムの強化(53%)」「人工衛星の活用(40%)」の3点のみであり、皆、「防衛」の印象が強く、他国へ介入するイメージを与えないものであったのも驚きであった。

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