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 先月、米国政府の日本担当者から、「この5年で日本は大きく変わった。防衛力拡大の議論にも反対意見がほとんど起きない。米国としてはとてもやりやすい」との発言を聞いた。

 しかし、実は、国民世論は、上記した通り、今の日本政府の前のめりの姿勢とは大きく異なりとても慎重である。自国を守るために必要な手段の拡大については支持するが、あくまで、相当程度厳格な意味での「専守防衛」に限る、という意識が強いのがいまだ日本国民の多数であると言えるだろう。

 この間の安保政策の変更に際して、政府が、国会の審議を意識的に避け、閣議決定のみで変更を決定していることから、国民が十分に情報を得て意見を形成する機会や、反対意見を表明する機会を奪われているという現実があることも指摘しておかなければならない。

  政府は憲法改正も実現しようとしているが、憲法についても改正賛成派が増えてはいるものの、自民党が一番のターゲットとする平和条項の9条に関しては、改正に向けた世論は強くない。5月3日の憲法記念日に発表された世論調査でも、読売新聞においては、「9条を今後どうすればよいと思うか」との問いについて、改正せずに「解釈で対応」「厳密に守る」の合計が「改正する」を8ポイント上回っていたし、リベラルとされる朝日新聞では9条改正反対は61%で、改正賛成のほぼ倍であった。

  憲法記念日には、全国各地で大規模な憲法集会が行われた。東京では予定の人数を超える3万2000人(主催者発表)が集まり、平和憲法をこれからも生かしていく、と声を上げた。

 日米政府間で語られている「日本」と、実際の日本社会は、こと安全保障に関しては大きく乖離している。

  このような日本の世論調査を、ワシントンで会った元ホワイトハウス高官に見せた際の彼の言葉が忘れられない。

「なぜ日本政府は、国民の声に耳を貸さないのだ」

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