スマホ寝落ちは集中力を奪う悪い習慣

 もっともおすすめできないのが、寝る前スマホなどの「ながら寝落ち」です。とくに就寝準備を整え、布団に入って寝る態勢を作り、電気を消してスマホに手を伸ばす…これが『日課』になっている方は多いのではないでし ょうか。

(写真はイメージ/GettyImages)

 今、ドキッとした方は、ただちにその習慣をやめるようにしましょう。寝る前のスマホが入眠しづらい状態を作り、睡眠の質をさらに悪くし、翌日の集中力低下を増長させるからです。スマホの画面から発せられるブルーライトが、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑制する働きをすることが明らかになっています。メラトニンが分泌されないと、眠気が強くなりません。

 さらに動画・SNS・ゲームなどのさまざまな情報が脳に刺激を与えることで、眠りづらくなる状態を後押しします。脳が刺激されると交感神経が優位になり、脳が覚醒して目がさえてしまうからです。

 このように、光と刺激の波状攻撃により、睡眠の質はどんどん悪い方向に向かっていってしまいます。とはいえ、夜にまったくスマホを見ないでいるというのは、なかなか難しいでしょう。目安としては、「寝る1時間前からスマホを見ない」ことをおすすめします。

マルチタスクと集中は両立できない

 結論からいうと、マルチタスクは集中力の低下をまねき、作業効率のアップ、生産性の向上にはつながりません。人間の脳の機能は20万年前からほとんど変わっておらず、しっかりと対応しきれていないのです。マルチタスクは、同時に作業をこなしているようでいて、じつは脳がものすごいスピードで複数のタスクを瞬時に切り替えているだけなのです。

 ひとつの作業を行い、その作業に対する思考をいったん停止し、別の作業の情報を呼び起こし、思考を切り替えて次の作業を行う、ということを超短時間のうちに繰り返していたら、脳はどうなってしまうでしょう? 当然、疲れてしまいます。

 脳が疲れると、自律神経が乱れます。そして、自律神経が乱れると、集中力や判断力が低下します。結果的に、ミスや物忘れが多くなり、作業効率は落ちます。そう、マルチタスクと集中は両立できないのです。

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小林弘幸

小林弘幸

小林弘幸(こばやし・ひろゆき) 順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1987年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などの勤務を経て順天堂大学小児科講師、助教授を歴任。腸と自律神経研究の第一人者。『医者が考案した「長生きみそ汁」』など著書多数。テレビなどメディア出演も多数。

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