子育てで大切なのは、「何をするか」よりも「何をしないか」だーー。こう口をそろえるのは、多くの小学生が首都圏トップ校に合格する「宮本算数教室」の宮本哲也さんと、栄光学園の元数学教師で「思考力教室いもいも」を主宰する井本陽久さんだ。教育界きってのカリスマ2人が、「子どものやる気スイッチが入らない」という保護者の悩みにずばっと回答した。教育ジャーナリスト・おおたとしまささんと2人の共著書『子どもが自ら考えだす 引き算の子育て』(Gakken)の考え方をお届けする。

MENU やる気スイッチが見当たらない 親はすぐに干渉しちゃう 頑張りはいっさい評価しない

やる気スイッチが見当たらない

Q 集中力がなく、落ち着きがなく、なんど説明しても聞いていません。なんど同じことを注意しても直りません。いわゆるやる気スイッチが見当たりません。

宮本 興味がないことに集中しないのは当たり前です。興味がないのに一生懸命聞いているのは主体性を失っているということ。いいことじゃありません。

 うちの卒業生で筑駒(筑波大学附属駒場)に行った子が、幼稚園では「検査受けたほうがいいです」と言われたそうです。なんで検査をすすめられたのかといえば、一人だけ先生の話を聞けないからだと。私の授業ではすごく集中してたし、めちゃくちゃ賢い。

 だからこれは、集中力がないんじゃなくて、興味がないだけです。落ち着きがないのは、早く解放されたいからです。

井本 「集中力」ってよく使うけど、集中力をここにポンと出してくださいと言われても、誰も出せませんよね。そんなもの、実はない。ほかの「○○力」も同様です。概念が独り歩きして、その概念に縛られるってことがあります。

 このまえ森の教室で、大きな岩に石をガンって投げつけて割ろうとしている子がいました。なかなか割れない。まわりの子たちも集まってきて、やっぱり割れないと。それを朝の10時から夕方3時までずっとやってました。最終的に石は粉々になって、それをぜんぶ集めて大切に持って帰りました。

宮本 それを見れば、自分が試行錯誤したことやそのときの気分を思い出しますよね。

井本 森に行って放っておけば、子どもって当たり前に没頭するものを見つけます。でも子どもがやりたいことってだいたい大人からすると無意味なことだから、ほとんどやらせてもらえない。「あなた集中力ないね」って言われても、子どもからしてみたら「没頭したいのに止められるじゃん」みたいな。

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おおたとしまさ
教育ジャーナリスト おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。リクルートでの雑誌編集を経て独立。数々の育児誌・教育誌の企画・編集に携わる。現在は、幼児教育から中学受験、思春期教育、ジェンダー教育、教育虐待、不登校、教育格差問題まで多岐にわたるテーマで現場取材および執筆活動を行っている。書籍のみならず、新聞から女性誌、各種ウェブメディアまでさまざまなメディアを舞台に、取材成果を発表し、テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。著書は『いま、ここで輝く。』(エッセンシャル出版)、『学校に染まるな!』(ちくまプリマー新書)など80冊以上。

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