──そんな忘れ難いテレビマン、そして鈴木さんの“戦友”として『もう明日が待っている』の最後のページに「スマスマ」のチーフプロデューサーで、今年2月に亡くなった黒木彰一さんへの献辞が添えられています。
黒木さんの“遺言”
鈴木:「小説『20160118』」を長い物語にするにあたって、これは僕とSMAPの話でもあるけど、僕らと一緒に番組を面白くしようと作ってきたチームの話も強烈に描き残したいと思ったんです。SMAP5人の旅企画はスタッフの強い思いがあって、裏ではスタッフがものすごい努力を重ねて作っていたこととか。
かつ、東日本大震災への向き合い方もそう。SMAP、飯島(三智)さん、僕らがみんなで向き合ってきた物語をやっぱり書きたくなった。
実は、そういう話は黒木さんの入院と闘病が長引いていて、もしかしたらと不安に思い始めてから書いたことでした。彼はコントの中で中居(正広)さんが扮した“ダメ人間”として登場したり、メンバーにも愛され続けた人。みんなにいじられまくっていたけど、あの人がずっと頑張り続けたことで、マイケル・ジャクソンやマドンナ、レディー・ガガのゲスト出演が実現したり、いろんな奇跡を成し遂げることができたんです。
最後に黒木さんと面会した日、この本のゲラを本人に渡しました。その夜にLINEが来て「非常に面白く読ませていただきました。本当にありがとうございます」と書いてありました。もうその時点ではメールを打つのも大変だったはずなのに。葬儀の日にはお子さんから感謝の言葉をいただきました。それを聞いて、僕もこの物語に「。」が打てた気がしました。だから、ギリギリのタイミングでしたけど、最後の1行を本に付け加えさせてもらいました。
面会したとき、帰り際に黒木さんが一緒にいたスタッフにこう言ったんです。「もし(SMAPが)再結成するときは、絶対おさむさんに(放送作家を)頼めよ」って。それが多分、黒木さんの遺言。僕はもう放送作家を辞めると黒木さんも知ってたんですけど、その言葉は自分の中では背負っています。
(構成/ライター・松永良平)
鈴木おさむさんお薦めの本3冊
医師である著者が命のあり方を描く
『スピノザの診察室』/夏川草介著/水鈴社
『ゲームの達人』/シドニー・シェルダン著、天馬龍行・中山和郎訳/アカデミー出版
『毎月新聞』/佐藤雅彦著/中公文庫
※AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より抜粋